マルチビジネスに勧誘された時の話
大学生になって初めて出会ったものはたくさんあるが、マルチ商法もその一つだ。
マルチ商法とは別名ねずみ講と呼ばれ、会員が新規会員を誘い、その新規会員がさらに新しい会員を誘い入れるというシステムによって規模を拡大していくビジネスのことだ。
多くの場合この連鎖を結び付けているのは紹介料で、会員は新しい会員を入れれば入れるほど紹介料を手にすることができる。
なぜ会員が紹介料にこだわって勧誘活動に熱心になるのかというとこれまた多くの場合入会する際に多額の入会費を取られるから。
その入会費を回収するために友達や知り合いに連絡をし、同じ沼に引き込もうとするのだ。
マルチ商法の注意点を簡単に2つ挙げる。
1つは入会の段階では別の活動を掲げている場合があること。
もう1つはこのシステムで苦汁を飲むのは一番末端の人間ということだ。
前者に関しては後程述べるが私の場合はバイナリーオプション投資だったし、セミナーやその他金融詐欺を入り口にねずみ講が展開されていく。
「バイトコロナで厳しくない?」などと昔の友達から連絡があったりしたら要注意。
まずマルチの誘いと考えてよいだろう。
「努力次第で」稼げる簡単な投資を持ちかけられ入会すると実際には思ったように稼ぐことができず、
結局はマルチの紹介料で入会費の穴埋めをしていくしかなくなるのだ。
後者についてはシステムを頭の中に描いてもらえれば簡単なことで、マルチの図式でトップのものが損をすることはまずない。
なぜなら実態のあるサービスを提供する必要がないうえに絶え間なく新規会員の入会費が懐の中に入ってくるからだ。
入会費の元を取ることができなかった、つまり新しい会員を引きずり込めなかった末端の会員が一番の被害を被る。
私は大学2年の時、バイナリーオプションの勧誘を受けた経験がある。
今日はその思い出に浸りつつ記していきたい。
マルチに紹介してくれたK君に出会ったのは大学1年の春。
大学の野球サークルの体験入部で同じになり意気投合する。
結局そのサークルには入らなかったものの交流は続き、LINEのやり取りをするほどの仲になった。
彼は2浪での入学だっただけに同級生と比較して焦りを感じていたようで、
だからこそ早くから色々行動している姿は素直に感心していた。
大学1年の冬あたりの時にも彼は社会人に向けた素養を養うため、有料のセミナーに入会した。
100万円ほどかかったが、人脈も広がるし満足なのだという。
今思えばこれが危ない兆候で、詳しく聞くと中身は講演のほかにも何をやるのかもわからない「恋愛セミナー」など玉石混交で
費用に見合ったセミナーなのかは眉唾だった。
誘いは突然だった。
K君「今お世話になってる人で資産運用してる人がいて、紹介したいんだけど空いてる?」
久々に会ってカフェにいる時に言われた。
この時は普通に話してる流れだったし経営学科に属する身として興味のない話ではなかったので了承した。
数日後の朝9時(休日なのに早すぎ…‼)渋谷のルノアールに呼ばれた。
少しかっちり目な服で!と言われていたのでセミフォーマルで、友人はスーツだった。
9時集合だったが9時にはその「偉い人」は来ず、初めの30分はその友人からの金融レクチャーが行われた。
催眠術師は術にかける前に予備催眠をかけるというがその類だろうか。
これからの時代不労所得がないといかに厳しいのか、そしてその「偉い人」がいかに優れた人物なのかを刷り込まれた。
レクチャーが終わったころ「偉い人」登場。
大学を中退するも今は20代ながら複数の会社を経営していると自己紹介があった。
名刺は渡されなかった。F氏とする。
F氏からはその組織でやっている投資についての説明がなされた。
あとから調べるとそれはバイナリーオプションという種類のもののようだった。
バイナリーオプションについて簡単に説明する。
- 株価なり通貨の上昇・下落の二択で取引が行われる
- 一定時間後の上昇・下落を言い当てられれば配当率に応じた返金がある
- 一方で外してしまうと購入した金額ごと没収される
バイナリーは2進法を指し一定時間後に上がったか下がったかだけで勝敗が決まる極めて簡単なシステム。
私が聞いた話で言うと、一定時間というのは5分後とかでもいいので
手早くお金を出し入れできる・500円から賭けられる
ということだった。
この投資方法自体は(アリナシは別にして)世に存在するものではあるが、F氏はこの上昇・下落を予測するシステムを開発し、入会の際にはそれを購入することが条件だという。
ここまで聞いて私は、射幸心を最大まで煽ってからそのシステムの値段を言おうとしているF氏の意図が見え見えですでに疑念を抱いていたし、
こういうギャンブル事は自分には合わないと肌感覚で直感していた。
そもそも普通の株式投資と違い、500円かけて負けたら0円になるのでは勝率50%では大損こくことをセンター数学1A,8割台の私は見抜いていた。
たとえF氏の言う通りそのシステムを使えば高い割合で取引を的中できるのだとしても、
よほど配当率が高いかシステムが非常に安価であるかでないとすぐには元が取れない代物だということは冷静に考えればわかると思う。
ここまでは「自分はやらないだろうな」と思いながらも、
「そういうものもあるのか~」と興味を持っているふりをしてうんうんと聞いていた。
射幸心を存分に煽れたと思ったのかついにシステムの値段発表。
いくらだと思います?
ちなみに私はその場で聞かれたとき20万って答えた記憶がある(笑)
正解は50万円だった。入会に別途お金がかかるのかは忘れたが、とにかくそのシステムは50万円するのだそう。
何せ20万と答えたのは自分の銀行口座残高がそれだったからで、当然50万円なんてぽんとは出せない。
この段になると紹介者のK君もいきり立ってくる。
「そんなお金すぐには出せないです・・・」
シュンとして言うと
想定内だったのか、今度は2人して学生ローンを勧めてきた。
「この投資で努力すれば村瀬君ならすぐに元は取れる!」
「不安なら月々の利子分だけバイトで稼げばいい」
「俺も学生ローン組んで始めたから大丈夫!」
初対面の人間に平気な顔で借金を勧めてきたF氏、そいつを紹介してきたK君の信用はもはや失墜していた。
だが持前の好奇心がうずき、行けるところまで行ってみようという気になった。
この団体がマルチ形式であることもこの後分かった。
もし筆者が入会したら紹介料がK君の元に入るという。
つまりマルチ組織でいう「入会費」はこの組織ではシステム購入費の50万円だといえそうだ。
一通り話しきった後も私が煮え切らない態度をとっていると、仲間が渋谷のカフェにいるから話聞いてみなよと提案してきた。
もちろん行った。
F氏とは別れて今度はサンマルクかどこかのカフェに行った。
そこには職業不詳の若い男性2人組がいた。
T氏とS氏とする。片方はジャングルポケットの斉藤に似ていた。
話し方も似ていたw
始めたいときに始めればいいよと言ってくれたF氏とは違って、2人は今すぐ始めろ派だった。
今始めなかったら多分やらないからチャンスを逃すことになる。やるなら今だ。
ということを何度も言われた。
イケメンのT氏は厳しめで斎藤似のS氏は優しい感じで良いバランスだった。
結局色々話した後返事はあいまいにして店を出た。
こちらの2人はコーヒーをおごってくれなかった。。
それからも返事をはぐらかしそれなりの距離を保って接していた。
たまにLINEが来たり連絡が来たりして心変わりしていないか聞かれたがそのたびに「やらない」と答えた。
ここ1年は誘いが来ていない。
こんな私のマルチ騒動を懐かしみながら書いてみた。
今何しているのかは分からないが、たまにインスタのストーリーで誰かの誕生日パーティーに参加している様子や組織の人と仲良くしている様子を見るので元気にやっているのだろう。
この記事を読んでくれた皆様に言いたいのは、向こうから寄ってきたうまい話には疑ってかかることだ。
私の場合は前頭葉が発達しすぎているのでよほど理論的に確実性を理解しない限り乗らないと思うが
周りと自分を比べて焦りを感じてしまう人や人の話をそのまま受け取ってしまうまじめすぎる人は要注意。
インスタのストーリーなどでも投資で豪遊している様子に「お金困っている人助けられます」などという文言を添えた投稿をしばしば見るようになった。
周りの友人でも久々に飲みに誘われたと思ったらマルチの勧誘で寂しい思いをした人がいる。
マルチや怪しい投資は一見お金が儲けられてよさそうと思うかもしれないが、
その布教活動によって多くの良識ある友人を失う結果になる。
自分の時間やお金をどう使うかは個人の勝手だが、少なくとも私は友人やお世話になった人を裏切るようなことには使いたくはないし、そういう人に負けないように自分はマイペースに正攻法で成長していきたいと思った。
だが生きていて1度くらいはマルチのお誘いを受けることもあると思う。
その際は経験として話を聞いて見ることをオススメする。きっと面白いから。
インスタ → @village_10shit